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快眠のプロが解説! 忙しい現代人の“睡眠の質”を高める快眠習慣|三橋 美穂

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  • ケア
最終更新日 2023.05.01
読み終わるまで12分

忙しい現代人は、睡眠時間を削ってしまいがちです。WELLGOODで実施したアンケートでは、平均睡眠時間が「6時間程度」と回答した人が40.8%でトップ。「5時間程度」が24.4%、「4時間程度」が6%と、30%を超える人が5時間程度かそれ以下の睡眠で過ごしているという結果になりました。

Profile
プロフィール
三橋 美穂
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー

1万人以上の眠りの悩みを解決してきた睡眠のスペシャリスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立し、全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。

WEB:https://sleepeace.com/

「睡眠の質をよくしたい」と感じている人はなんと98%を超えます。そこで今回は快眠セラピストの三橋美穂さんに、睡眠の質を高め、日中のパフォーマンスをUPするコツを教えていただきました。

01

睡眠の役割と心身への影響 寝不足は酩酊状態と同じ!?

そもそも睡眠は、どのような役割を担っているのでしょうか。三橋さんは「睡眠は日中のストレスや刺激で傷ついた37兆個の細胞を修復する時間」と答えます。脳を休め、記憶を整理・定着させるのはもちろん、健康やメンタルにもさまざまな影響を及ぼすそうです。

「例えば認知症は、アミロイドβという老廃物が脳に蓄積して起こるとされますが、この老廃物を排出する作業は睡眠中に行われます。また4時間30分の睡眠が5日間続くと、うつ症状に近い脳の機能低下が起こるという報告もあります」

脳機能が低下すると、集中力や判断力、感情をコントロールする力も弱まります。オーストラリアの研究では、起床後15時間後(朝6時に起床したら夜9時)の脳の働きは、血中アルコール濃度0.03%程度に、18時間後(深夜0時)は0.05%に等しいという結果がでたそう。

つまり、寝不足はほろ酔い状態と同じ。仕事でミスをする、感情が不安定で人間関係がうまくいかないなどの悩みの裏に、睡眠不足が関係している可能性があるのです。

美容の観点からも、睡眠は重要だと三橋さん。

「睡眠中に分泌される成長ホルモンは、美しい肌や髪をつくります。睡眠不足になると、食欲を増進するグレリンというホルモンの分泌が増え、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌が減るため、肥満につながります」

どんなに忙しくとも、最低6時間は睡眠をとるよう三橋さんはすすめます。

02

最適な睡眠時間とは 土日の寝だめで時差ボケが起こる

よく「理想の睡眠時間は8時間」と聞きますが、一概にそうとはいえません。一般に、働き世代は7~8時間、シニア層は6~7時間が目安になりますが、そこから外れる人もいます。1週間単位で睡眠時間(寝床にいる時間)を変えて日中のパフォーマンスの記録をとり、自分のベストな睡眠時間を把握するのがよいそうです。

「私は8時間睡眠では寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚めました。睡眠の質が悪いため日中もだるい。ところが、睡眠時間を7時間30分にすると、夕方にも疲れや眠気がなくパフォーマンスが高かったんです。7時間も悪くないのですが、夕方に少し疲れがでました」

理想ともいわれる8時間睡眠でパフォーマンスが落ちたとは驚きです。なお、最適な睡眠時間を探すときは、体内時計の乱れが影響を及ぼさないよう、1週間ごとの就寝・起床時刻を揃えることが大切。

また、三橋さんが注意を呼びかけるのが休日の「寝だめ」。平日に自由な時間がない分、週末は夜更かしをして昼まで眠るという人、多いのではないでしょうか。

「ソーシャル・ジェットラグは大きな問題です。直訳すると“社会的時差ボケ”。平日と休日の就寝・起床リズムのズレから、日中に眠気が強く夜眠れない、身体がだるい、頭がぼんやりするなど、時差ボケのような機能低下が起こります。ソーシャル・ジェットラグのある人は、高血圧、糖尿病、肥満のリスクが高まることもわかっています」

03

眠りの質を高める「To doリスト」と「NGリスト」

ここでは、睡眠の質を高める「To do リスト」と「NGリスト」をご紹介します。

「どうしても睡眠時間を確保できない」「休日は少しでも長く寝ていたい」という人のためのテクニックもありますよ。

【睡眠の質を高める「To do リスト」】
・毎日決まった時間に起きる
・太陽の光を浴びる
・夜は暖色系の照明にする
・就寝の1~2時間前に入浴する
・就寝前にストレッチする
・寝室の温度と湿度を整える
・目覚まし時計を離れた場所に置く

体内時計を整えるため、毎日決まった時間に起きて太陽の光を浴びます。

目覚めに太陽光を1分、日中はトータルで30分以上は浴びましょう。太陽を浴びて活性化する脳内物質のセロトニンは、夜にメラトニンという睡眠ホルモンに変化するためぐっすり眠れます。

日が落ちたら照明は暖色系にし、就寝する1~2時間前に入浴を。一度上がった体温が急激に下がるときに眠くなるため、寝つきがよくなります。

ストレッチなどで身体をゆるめ、血流をよくして眠ると睡眠中の疲労回復力がUP。寝室の温度は夏なら28度以下、冬は18度以上に。湿度は一年を通し50~60%ほどが快適です。

ぜひ実践してほしいのが、目覚まし時計をベッドから離れた場所に置くこと。三橋さんいわく、目覚めとは「目を開ける」ことではなく「立ち上がる」こと。姿勢を保つ抗重力筋に力が入ると交感神経が刺激され、二度寝、三度寝を繰り返すことなく自然に目覚められます。

「NGリスト」

一方でNGなのは、就寝前の「お酒」「カフェイン」「タバコ」。さらに「夕方以降のうたた寝」「夜食」、「寝床でのスマホ」も睡眠の質を下げてしまいます。

「To doリスト」を全部こなすのは難しい! という人は、NG習慣をやめるだけでも睡眠の質がすいぶん改善されるそうです。

忙しい人に向け、こんなテクニックも!

睡眠時間が確保できないときに有効なのが、仮眠です。

「夜の睡眠が足りなければ、ランチタイム直後の仮眠で補いましょう。仮眠といっても、横になる必要はありません。椅子に座り15分間目を閉じれば大丈夫。コーヒーなどでカフェインをとって仮眠すると、すっきり目覚められます」と三橋さん。

休日ゆっくり眠りたいときは「1時間早く寝て、1時間遅く起きる」とよいそう。

「睡眠時間が2時間増えますが、就寝から起床の中間の時刻である“睡眠の中央値”が変わらないので、時差ボケが起きにくくなります」

よく眠るのが一番ですが、難しい場合はテクニックを駆使し、日中のパフォーマンス低下を防ぎたいですね。

04

ぐっすり眠ってすっきり目覚める、3つの快眠セルフケア

快眠のためのセルフケアは「頭皮マッサージ」「筋弛緩法」「目元ケア」の3つ。どれも簡単に行えます。

不眠に悩む人は、頭皮が硬いことが多いそうです。頭皮をゆるめて血行をうながし、脳をリラックスさせてお休みモードへ切り替えましょう。お風呂上がりに行うのがおすすめです。

■お休みモードへ切り替える「頭皮マッサージ」
1.髪に手を入れ、頭の両サイドを指の腹で上から下へと数回動かしてほぐします。

2.親指の腹でこめかみを円を描くように数回押しほぐします。

3.頭部のややくぼんでいる百会のツボを、息を吐きながら数回押しほぐします。
頭皮マッサージ

リラクゼーションメソッドの「筋弛緩法」は、寝つきがよくなる、中途覚醒が減る、熟睡感が増す、疲労感が軽減されるなどメリットがたくさん。今回は就寝時にベッドで行えるよう簡略化した方法をご紹介します。

■筋弛緩法
1.ベッドに横になり、こぶしを握ってひじを曲げ、5秒ほど力を入れます。ストンと力を抜き、10秒その状態を味わいます。

2.両足のつま先を体の方に向け、ふくらはぎに力が入るようにお尻からかかとまで、5秒ほど力を入れます。ストンと力を抜き、10秒その状態を味わいます。

3.「1」「2」を同時に行い、5秒ほど全身に力を入れます。ストンと力を抜き、10秒その状態を味わいます。

全身の緊張をゆるめる「筋弛緩法」

ロングバージョンはこちらをご覧ください。

リラックスして快眠へ導く「目元ケア」

セルフケアに睡眠ケアグッズを取り入れるのもよいでしょう。技術がいらないため、手軽に入眠スイッチをONに切り替えることができます。

目の周りをやさしくタッピングする、充電式のホットアイマスクを使った「目元ケア」もおすすめ。三橋さんは「就寝前にベッドで横になって利用しています」と話します。

ゆるやかな振動と温め効果、さらにヒーリングBGMでリラックスでき、15分のケア中に眠りに落ちることも多いそうです。「目の疲れもケアされ、翌朝すっきり目覚められます」と三橋さん。

05

疲れをとるための睡眠から、成長のための睡眠へ

最後に、三橋さんからこんなメッセージをいただきました。

「子どもは心や身体の成長のため、たくさん眠りますよね。それが大人になると、睡眠の目的が疲れをとることになってしまう。身体の成長は20歳頃がピークですが、心の成長は一生続くもの。本来、睡眠は成長するための前向きな行為です。忙しいとおろそかにせず、ご自身の成長のために睡眠を大切にしてください」

06

インタビューを終えて

ポジティブな空気に満ちている三橋さん。きっとこれも快眠パワーなのでしょう。

多忙を理由に睡眠時間を削っても、「ほろ酔い状態」では効率が悪く、また睡眠を削るはめになる。そんな悪循環から抜け出し、自分自身が成長できるよう睡眠と向き合っていきたいですね。

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